コラム
役員②「特殊関係使用人」
2021年9月2日
前回の「みなし役員」に続き、今回は「特殊関係使用人」について解説いたします。
「特殊関係使用人」は「みなし役員」とよく混同される論点で、税務調査において調査官が誤って否認指摘してくる場合もあります。
その際に即座に反論できるように論点を整理しておきましょう。
・特殊関係使用人の定義
みなし役員は
・株の保有割合(形式要件)
・経営に従事している(実質要件)
の両方を満たしている場合に適用されます。
これに対して特殊関係使用人は
・役員の親族
・役員の事実上の婚姻関係者
・上記の者と生計を一にする親族
・役員に生活の支援を受けている者
のいずれかを満たしている場合に適用されます。
要するに役員の親族が使用人として働いていれば、それは自動的に「特殊関係使用人」となるわけです。
みなし役員は実質要件が曖昧で判断に困ることもありますが、特殊関係使用人はかなり明確に判断をすることが出来ます。
・過大給与
特殊関係使用人に該当する場合は「給与等のうち不相当に高額な金額」が損金不算入となります。
過大給与の判定は過大役員報酬と同様に
・職務の内容
・法人の収益の状況
・他使用人の給与との比較
・類似法人の使用人の給与との比較
から総合的に判断されます。
このことから、特殊関係使用人であっても特別に高い給与をもらっているわけでなければ否認指摘される可能性はあまり高くありません。
税務調査で問題にあがるのは全く勤務実態のない役員親族が給与を貰っている場合等です。
勤務実態無しで給与を貰っていればたとえ少額でも「貰いすぎ」と言われても仕方ありません。
(役員であれば非常勤役員として勤務実態が無くても報酬を貰う事は問題ありません。これは使用人が「労働」の対価として給与を貰うのに対し、役員は「地位」の対価として報酬を受け取るからです。)
如何だったでしょうか。
「役員親族への給与が損金不算入になる」という点で「みなし役員」の規定と「特殊関係使用人」の規定は類似点がありますが、その判定と損金不算入となる要件は全く異なります。
これを混同してしまうと税務調査で正しい反論が出来なくなりますので、是非とも論点を整理してから税務調査に臨んでください。
次回は役員シリーズの最後として「使用人兼務役員」について解説したいと思います。
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