税務調査
税務調査の流れ
税務調査とは
税務調査とは、会社の税務申告が正しいかどうかをチェックするために行われる調査のことです。
税務調査は次のような流れで進みます。
事前通知
税務調査には「強制調査」と「任意調査」の二種類があり、ほとんどの場合は「任意捜査」です。
任意調査の場合は原則として電話で税務署から事前に日程調整の連絡が来て、日程の打ち合わせを行います。日程はこちらの都合の良い日を指定して構いません。税理士に委任している場合は、電話は税理士に来ます。
任意調査でも稀に事前の連絡無しに税務署員が来ることがあります。いわゆる無予告調査です。
しかしあくまで「任意」調査ですので、納税者の同意なしに税務調査がスタートする事はありません。都合が悪ければ後日出直すように伝えましょう。
安易に調査官を会社にあげてしまうと、調査を「黙認した」とみなされ調査がスタートしてしまう事があります。会社の中には入れないようにしましょう。
事前準備
税務署から調査対象になる期間が伝えられます。
従って、事前通知された調査対象期間(通常は3年間)の資料を整理し、税務調査までにそろえておきましょう。
一般的には下記の資料が求められます。
準備書類チェックリスト
- 総勘定元帳
- 補助元帳
- 証憑(会社が受領した請求書および領収書)
- 会社が発行した請求書
- 会社が発行した領収書の控え
- 会社が発行した手形および小切手の控え(耳)
- 預金通帳
- 現金預金出納帳
- 賃金台帳および年末調整書類
- 棚卸明細表
- 出張手当等の経理規定
- 会社のパンフレットおよび組織図
- 販売契約書、賃貸借契約書、稟議書
- 議事録(株主総会や取締役会等の議事録)
- 見積書、納品書
- タイムカードまたは勤怠管理表
- その他重要だと思われる書類
調査当日
□調査日程
通常の中小法人であれば調査は2~3日間で行います。もちろん企業規模や個々の事情等により調査期間が長引くこともあります。
一般的なスケジュール
1日目
午前10 時頃に税務調査官が来社する事が多いです。
初日の午前中は、まずは最初の挨拶と事業概要の説明を求められます。
事業概要の説明は社長や事業主自身に求められるため、税務調査を税理士に一任している場合でも、初日の午前中だけは事業主が調査に同席する必要があります。
その後、帳簿のチェックや領収書と帳簿の付け合せ、仕訳のチェックと調査が進行していきます。
注意点として、税務調査では調査官の権限を逸脱した調査が行われる事はしばしばあります。そのような調査が行われた場合は必ずその場で拒絶する必要があります。
もし拒絶の意思を見せないと「黙認した」とみなされる可能性があります。
2日目
1日目と同様に調査を行います。
夕方、調査が終了したら、調査官からその結果が口頭で伝えられます。そのとき、指摘事項がある場合は修正申告するよう求められます。また、調査当日に必要な資料がそろっていなかった場合は後日提出するよう求められます。
調査後
指摘事項がある場合、内容に納得できれば後日修正申告書を提出し納税して調査終了です。
もし納得できなければ反論しても構いません。調査官が折れる場合もありますし、折れてくれない場合もあります。
どうしても納税者が納得いかず調査官も折れてくれない場合は調査官の権限で更正処分となる手続きに進みます。
更正処分は調査官としても非常に手間のかかる処理ですので、大抵は調査官の権限内で妥協点を見つけることになります。
税務調査に狙われやすい会社
税務調査の対象は、国税庁の機関システムに、決算書等の情報が入力処理され、第一次的に選定されています。
コンピューターが選定した第一次のリストから、税務調査の現場が、長年の経験に基づいて、実際の調査対象を選んでいます。
この時、以下のような会社が調査対象として選ばれやすくなっています。
①利益が出ている、逆に売上が伸びているのに利益が減少している
売上が伸びているのに利益が変わらない会社は利益を隠している可能性を疑われます。
②同業とくらべて利益率が低い
毎年の利益額が低額で安定している場合も疑いの対象です。
銀行から嫌われず、かつ、税金を抑えるために不正会計を行っている可能性を疑われます。
③変動が激しい勘定科目がある
- 原価率の増減が激しい
- 売り上げの増減が激しい
- 在庫や売掛金が著しく減少している
- 適切な経理が出来ていないと疑われます
④過去に重加算税を課せられた
前歴があるので、疑われても文句は言えないでしょう。
逆に言えば今後の調査頻度に影響するため、税務調査で重加算税だけは安易に受け入れてはいけません。
重加算税の要件の一つである「仮想隠蔽が行われた」には解釈の幅があり、多くの場合は反論可能です。
⑤外注比率が高い
外注費は架空経費としてよく使われる科目です。
⑥消費税の還付を受けた
近年税務署は消費税の還付に目を光らせています。
⑦売上高が1000 万円を少しだけ下回る
会計処理ミスで、本来は消費税の納税義務がある可能性があります。
税務署からすれば少しのミスの指摘で多額の追徴課税を課すことが出来るため費用対効果の良い調査といえます。
税務調査3つの対策
① 日頃の経理処理
税務調査対策で一番大切なことは何でしょうか。
税務署との交渉力?闘うという姿勢?
もちろんそれらも大切ですが、何より大切なことは普段から正確に経理処理をすることです。
当たり前ですが、正しい経理処理を行っていれば税務調査は何も恐れることはありません。間違いがなければ税務署は何もできないのです。
当事務所では可能な限り記帳代行サービスを受けていただいております。経理処理は一見簡単に見えて実は奥深い論点が多々あります。
誤った処理がされないように、可能な限り専門家である我々にお任せください。
もし、どうしても自社で記帳したいということであれば、その内容を税理士が直接チェックすることでミスを事前に防ぎます。
② 書面添付制度の活用
書面添付制度は、税理士が作成した申告書に一定の書面を添付することで、税務調査前に税理士から税務署への意見陳述の機会を与えられる制度です。
この制度を利用している場合、税務署は納税者に対して税務調査を通知する前に、税理士に意見徴収しなければなりません。
この税理士意見聴取によって何か問題が発覚した場合以外は、税務調査が省略となります。
この制度を利用すれば税務署に入られる可能性はかなり低くなります。
この書面添付制度に対応している税理士さんは実はあまり多くないのですが、当事務所ではできるだけ多くの顧問先にこの制度を適用していただきたいと推し進めています。
③ 闘う税理士
税務調査の際には顧客の立場になってしっかりした根拠を提示し、税務署と交渉調整するのが税理士の腕の見せ所です。しかし、税務署寄りの税理士が税務調査に立ち会った場合、根拠を出せなかったり税務署に意見するのを嫌がったりして、税務署の味方側かのように見えてしまう税理士がいるのも事実です。
調査官が正しく法律を理解し、適切な指導の下調査を行ってくれるのであれば、このような税理士もよいでしょう。
しかし、残念ながらルールを逸脱した調査を行う調査官もいます。
そのような調査官には税務署からの理不尽な指摘には全力で対峙する「闘う税理士」として対応します。
とはいえ税務調査の肝は事前準備です。すなわち①、②を適切に行っていれば、それはすでに勝ち戦です。
「闘う税理士」と書いていますが、「闘わないで勝つ税理士」の方が圧倒的に優れているのです。
税務調査に対する正しい知識
税務調査は行政行為です。納税者が従わなくてはいけないこと、従わなくてもよいこと、やっていいこと、いけないこと、重加算税ならその基準、認定役員賞与、青色の取り消し等、事務運営指針や法律で決められています。
調査官がこの指針や法律通りに対応してくれれば何の問題もないのですが、納税者側が知らないと思ってこれらを無視してくることや、こちらが主張しなければ得られない権利もたくさんあります。
残念ながらこれらの知識を正確に持っている税理士は少数ですし、それを調査官に主張できる税理士はさらに稀です。
税務調査Q&A
税務調査により調査官より「個人の通帳を見せてください」と言われたのですが、見せなければいけないのでしょうか。
法人の調査で代表者の個人通帳を見せることを求められることは多々あります。疑問に思いながらも明確に反論できる社長はほとんどいないと思います。(税理士でも正しく反論している方は少ないかもしれません)