太田和之税理士事務所

コラム

税務調査後の対応、修正申告と更正

2021年11月10日

税務調査で否認事項があった場合、多くの納税者と税理士は「修正申告」をする事で調査終了とします。

しかし、調査官の否認指摘に納得が出来ない場合も修正申告しなくてはいけないのでしょうか?

 

当然そんなことはなく、納得が出来ない場合は「更正してください」と伝えることになります。

 

・・・・・というのも実はあまり正しい表現ではありません。

何故なら、調査の終了は原則として更正をし、ただし修正申告を勧奨することもできる、と規定されているからです。

 

しかし、実際には調査官は修正申告前提で話を進めてきます。これは何故でしょうか。

 

 

修正申告と更生とは

修正申告・・・・

調査官の指摘に納得し、自ら誤りを認めて提出するもの

 

更生・・・・

調査官に否認指摘されたが修正申告を提出しなかったところ、税務署側から処分されるもの

 

修正申告は自分で提出するもの、更正は税務署からの処分という区分です。

 

 

修正申告のデメリット

修正申告で税務調査を終了した場合、不服申し立てが出来ないというデメリットがあります。

不服申立てとは、税務署からの処分に納得できない場合、税務署もしくは国税不服審判所に訴えを起こすことをいいます。 修正申告は自ら納得して提出するものであるため不服申立てはできません。

 

 

更正のデメリット(納税者側)

更正にした場合の納税者側のデメリットは本来は無いはずです。

修正申告の勧奨は「行政指導」ですので、修正申告の勧奨に従わなかったという理由で不利益な取り扱いしてはいけないという規定が行政手続法があります。

したがって、更正にした場合はデメリットが無いというよりはデメリットはあってはいけないものです。

 

ただし、更正をした場合「納税者側」にはデメリットはなくても、「税務署側」には下記のような大きなデメリットがあります。

 

 

更正のデメリット(税務署側)

・更正するための税務署内の手続きが面倒

更正の手続きは統括官・副署長・署長と3人の決裁を必要とし税務署内の手続きが非常に面倒です。

ですから調査官としては可能な限り更正はしたくないというのが本音でしょう。

 

・曖昧な理由での否認が出来なくなる

税務調査での否認指摘は、その根拠が曖昧である事がよくあります。納税者が納得して提出する修正申告であればそれでも問題はありませんが、更正の場合は否認根拠を法令で明確にしなければなりません。

そして否認根拠を明確にするのは非常に難しいのです。

 

・不服申し立てされる可能性がある

納得が出来ずに更正になったわけですから、同じ内容で更正処分されても納税者は納得できないでしょう。

結果として高い確率で不服申し立てとなります。

その場合税務調査を担当した調査官とは別の調査官が再調査をしなければなりません。要するに二度手間になってしまうのです。

 

 

以上の理由により、調査官はまず修正申告を勧奨してきます。

勧奨に応じずに「更正としてください」と伝えると、更正をしたくない調査官は様々な飴と鞭とちらつかせて修正申告を勧めてくる事が多いです。

 

たしかに「修正申告には応じません」は言いづらいかもしれません。

しかし納得のできない否認指摘に修正申告書を提出するほうがよっぽど問題ではないでしょうか。

 

 

 

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