コラム
役員③「使用人兼務役員」
2021年9月9日
「みなし役員」・「特殊関係使用人」と続いて、最後に「使用人兼務役員」についてお話させていただきます。
使用人兼務役員とは法人の役員でありながら、従業員としての肩書きを持つ人の事を言います。
例えば優秀な工場長を役員に昇格させたいが、工場長の職務は引き続きお願いしたい・・・・といった事は人事上十分あり得ます。
このような場合は役員と使用人を兼ねる事から、使用人兼務役員と呼ばれます。
使用人兼務役員は税制上のメリットが大きい反面、判定が困難なことがあります。
そこで今回は使用人兼務役員のメリットと注意点をお伝えしようと思います。
・使用人兼務役員のメリット
①使用人分給与は定期同額給与の制約を受けない
役員報酬は原則毎月同額にしなければ税法上の費用に入れることができません。しかし使用人兼務役員の「使用人としての給与」は役員報酬ではないため、毎月変動させることが可能です。例えば残業代の支給をする事も可能になります。
ただし、給与の内「役員分」と「使用人分」を客観的に分ける必要がありますので、株主総会議事録等で記録しておきましょう
②賞与の支給が可能
役員賞与は「事前確定届出給与」を提出していない限り損金になりませんが、使用人兼務役員の「使用人分の」賞与は届出が必要ありません。
ただし、同程度の職位のある使用人と同水準であり、かつ他の使用人に対する賞与の支払いと同時期に支給する必要があります。
③雇用保険に加入可能
役員は通常雇用保険に加入する事は出来ませんが、使用人兼務役員は加入可能です。
つまり労災や失業保険の恩恵を受けることが出来るようになるのです。
・制度を活用する上での注意点
①使用人兼務役員になれない役員
使用人兼務役員は「役員のうち、部長、課長、その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事する者」と定義されています。
具体的には
・使用人としての職制上の地位(部長、課長、工場長等)を有していない役員
・代表取締役、副社長、専務、常務等の会社を代表する権限を持つ役員
・会計参与、監査役、監事等の会社法上使用人と兼務できない役員
・非常勤役員等の常時使用人として職務に従事しない役員
・同族会社の特定の役員(みなし役員と同様に判定します)
は使用人兼務役員とはなれません。
使用人兼務役員はメリットがある反面、使用人兼務役員に該当するかどうかの判定は実はかなり難しいです。利用する場合は必ず税理士に相談をするようにしましょう。
さて、3回に渡って役員について解説してきましたが、如何だったでしょうか。
役員に絡む税制は複雑でかつ誤りがあった場合の追徴税額が大きくなりがちですので、税務調査ではよく論点になります。
しかも税務調査の調査官で役員について体系的に理解している人はあまり多くはありません。時には法解釈を間違えて否認指摘をしてくるケースもありえます。
もし指定をされても鵜吞みにせず、まずは一度専門家にご相談ください。
税務調査対策には税法の知識が欠かせません。
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安城市以外でも愛知県全域に対応しておりますので、ご興味がある方は是非一度ご連絡ください。