コラム
法人で株の売買を行った場合の論点整理
2022年7月25日
こんにちは。安城市三河安城所在の税理士事務所、太田和之税理士事務所の太田です。
資産管理会社、という言葉をご存じでしょうか。
資産管理会社とは別名「プライベートカンパニー」といい、通常の法人が行うような企業活動はせずにオーナーの資産管理のみを行う会社の事です。
個人で資産を管理するよりも、税制面で多くのメリットを受けられるという特徴があります。
資産管理会社というと、ひと昔前は上場会社のオーナー社長が設立しているイメージがありましたが、最近では「不動産投資事業」や「株式投資」など副業を行っているサラリーマンが設立するケースが非常に増えています。
「株式投資」、特に株式から得られる配当金の税制上の扱いは法人特有の物もあり、個人投資家が混乱に陥る事も多いようです。
そこで今回は資産管理会社で「株式投資」をした場合に得られる配当金のややマニアックな論点を解説したいと思います。
受取配当の益金不算入
法人が配当を受け取った場合、その受け取った金額の一部は益金(=利益)に算入しなくてよいこととされています。
これはそもそも配当金は法人税を支払った後の利益ですので、これにまた税金をかけると二重課税となってしまうからです。
とはいえ投資目的で所有する株式の配当については、二重課税を排除する要請も強くないことから、持株比率が低い場合は控除できる割合も低くなります。
短期保有株式
受取配当の益金不算入は全ての配当金に適用できるわけではありません。とりわけ資産管理会社で注意しなければならないのは短期保有株式に係る配当金です。
短期保有株式とは、支払基準日以前1カ月以内に取得し、支払基準日後2カ月以内に譲渡した株式のことをいいます。
短期保有株式に係る配当金は益金不算入の適用を受けることは出来ません。
例えば配当金の権利確定日に株式を購入し、権利落ち日に売却したとします。
この時、例えば配当金が1000円払われるのであれば、権利落ち日の株価は理論上は1000円下がるはずです。
配当金の収入と株価の下落で帳尻があるわけですが、この配当金を益金不算入としてしまうと課税所得が実態よりも少なくなってしまうのです。
これを避けるためにあまりにも短期間に売買された株式に係る配当金については益金不算入を制限しているのです。
所得税額控除
配当金を受け取る場合は15.315%の源泉所得税が差し引かれた金額が振り込まれます。
通常この源泉所得税は決算申告時の法人税額から差し引くことができますが、株の所有期間が1年に満たない場合は注意が必要です。
この法人税から差し引くことが出来る源泉所得税は株式の所有期間対応分だけとされているのです。
例えば1年(12ヵ月)に一度、配当を支払う会社の株を4か月間だけ所有していたとします。
ちょうど権利確定日には所有しており、20,000円の配当金から3,063円の源泉所得税を引いた16,937円が振り込まれたとします。
3,063円の所得税を既に支払っているのであれば丸々返して貰いたいですが、そうはなりません。
計算期間の12か月中4か月しか所有しておりませんので
3,063円×4か月/12ヵ月=1,021円
しか戻ってこないのです。
さて、何故でしょうか。
もともとの理由は租税回避の防止の目的から制定されたのですが、税制改正を繰り返すうちにもはや租税回避の問題が無くなったにも拘わらず何故か残ってしまった規定なのです。
つまり意味は無いけど、何故か多めに税金を取られている、という事です。(と私は考えていますが、如何でしょうか。)
如何だったでしょうか。
資産管理会社は税金面でのメリットがある反面、その管理に手間がかかりがちです。
もし設立を検討されている場合は、専門家にしっかりと相談する事をお勧めします。
太田和之税理士事務所では資産管理会社の申告にも対応しております。。
安城市以外でも刈谷市・碧南市・大府市・豊田市・豊橋市等の愛知県全域に対応しておりますので、ご興味がある方は是非一度ご連絡ください。