コラム
法人成りのメリット①
2021年8月6日
起業するときは、はじめから法人を設立する場合と、まずは個人事業でスタートしてあとで法人を設立する場合があります。個人事業から法人を設立することを「法人成り」と呼びます。
法人成りには節税や、信頼性の向上、資金調達など多くのメリットがありますので、順調に利益が出ている個人事業主の中には法人成りを検討している方も多いのではないでしょうか。
法人成りには「事業の社会的な信用度が高くなる」「有限責任になる」等の様々なメリットがありますが、今回は法人成りメリット・デメリットを金銭面を中心に数回に分けてご紹介します。
①給与所得控除
法人化すると、会社から社長自身に給与を支払うことができます。そして、この給与には「給与所得控除」があります。
給与所得には必要経費などの控除がありませんので、それに類するものとして給与所得控除という控除枠が設けられています。
会社としては、社長の給与も経費となるので、売上から給与を経費として差し引くことができ、さらにその給与からも給与所得控除を追加で差し引くことができるのです。
給与所得控除は55万円から最大195万円で、給与額が増えると増加します。
個人事業主の青色申告控除は65万円ですので、給与額が少なければ青色申告控除の方が得という事もあり得ますが、年収190万円以上であれば給与所得控除が青色申告特別控除を越えます。
一番得するのは個人事業主としての収入もありつつ、給与収入もある状態です。
これであれば青色申告特別控除と給与所得控除をダブルでとることが出来ますので、最低でも所得控除が55万円も増えることになり、所得税率20%・住民税率10%とすれば16万5000円も税額が減る計算になります。
②所得の分散(家族への給与)
法人成りすると、役員報酬の設定の仕方によって所得税や住民税の額が大きく変わります。
これは
・給与額が増えるほど所得税率が上がるという所得税独特の計算(超過累進課税制度)
・給与所得控除は給与を受ける人全員が受ける
を原因としています。
極端な話ですが、社長一人で1000万円の給与を受け取ると、納付する所得税額は
1000万円-195万円(給与所得控除)-48万円(基礎控除)=757万円(課税所得)
757万円×23%(税率)-63万6千円(調整額)=1,105,100円(所得税額)
ですが、200万円の給与を家族5人で受け取ると
200万円-68万円(給与所得控除)-48万円(基礎控除)=84万円(課税所得)
84万円×5%(税率)=42,000円(所得税額/一人あたり)
42,000円×5人=210,000(合計所得税額)
となり、同じ年収2000万円でも納付する所得税額は約90万円も(!)減ります。
③退職金
日本の税制で最も有利なものはこの退職金でしょう。
退職金は老後の生活費をケアするという観点から、税負担が極端に少ないです。
勤続年数が40年であれば、退職金から2,200万円を控除して、残った額をさらに半分にして、さらに他の所得と分離して税計算をします。しかも社会保険料もかかりません。
一方個人事業主は何年経っても退職金をもらうことはできません。(小規模企業共済という手はありますが)
また、個人事業主の場合には、長年事業を手伝ってくれた家族専従者への退職金も認められていないので、この有利な税制が殆ど活用できないのです。
この点、法人化すれば毎月の給料額を減らして退職金を支払えば税金や社会保険料が安くなります。
家族従業員にも退職金を支払う事が出来ますので、退職所得の有利な税制をフル活用することが出来ます。
法人成りのメリットの一部を解説させていただきましたが、如何だったでしょうか。(続きは「法人成りのメリット②」で解説します。)
太田和之税理士事務所では法人成り以外の節税にも力を入れております。
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